ご案内
Tさんの手法はまず、購入しようというエリアに物件情報を持っていそうな業者名とその電話番号を、不動産情報誌でピックアップする。
そのエリアに実際に出かけて駅前に看板を出している不動産屋の電話番号を控えてくるのも一つの方法である(たいてい、不動産屋は看板に電話番号も書き込んでいるので事務所の中に入らなくてもわかるはず)。
そして、一O社ないしは二O社くらいリストアップできたら片っ端から電話するのである。
「予算や間取りといった基本的な条件を話したうえで、手持ちの物件情報で適合しそうなものがあればぜひ送ってほしいって頼むんですよ。
そのときに、『留守がちなのでまずは郵送かファックスしてください』っていえば、たいていはOKしてくれますよ」この「郵送かファックス」というのがミソなのだそうだ。
この要望に抵抗して、「とにかく一度手前どもの事務所に来てください」「それでしたらこれからすぐにお届けしますよ」というような業者は要注意だとTさんはいう。
えてして、物件がすべて先物だったり、会わないことには実力の発揮できないような強引な営業手法しか持ち合わせていない業者が多いのだそうだ。
「たぶん、売り主に直接つながっていないとか、情報についての自信のなさが、そういう態度に端的に現れてしまうんでしょうね」それにしてもほとんどの業者が、会ったこともない依頼者に対して気軽に物件情報を送ってくれるというのは、おそらく、多くの業者が一般の客を少なからずナメてかかっているからといえるのではないだろうか。
送られた物件は情報提供者の業者を通じないことには買うことはできない。
客は必ずやこのように誤解してくれている。
業者自身もそう勝手に思い込んでいるのである。
さて、こうして送られてくるのは、ほとんどすべて前述したような「毎速」と呼ばれるスタイルのチラシである。
「こうして情報を収集してみると、同じ物件情報が別々の業者からどんどん持ち込まれるのにびっくりさせられますよ」同じ情報が複数の業者から持ち込まれる。
そうなればもちろんどの業者を通じてでも買えるわけだ。
郵送で送られてきた情報なわけだから、後で「抜かれた」というトラブルは起きようもない。
なぜなら、同じ情報を提供した業者には、「残念、おたくよりも一足早くこっちの業者から情報はもらってましたんですよ」の一言で済んでしまうからである。
「抜いた」「抜かれた」というようなトラブルは一OOパーセント問題なく回避できる。
郵送かファックスでお願いします、というセリフにはこういう理由があったのである。
Tさんの情報収集の手法には、もう一つ大きなメリットがある。
それはマイペースで物件を見学、検討できるということだ。
ごく普通に業者から手渡しで物件情報を取得してしまうと、その場で多少興味があるようなそぶりを見せれば、それこそ業者の思うつぼである。
「それでしたら、善は急げと申しますでしょ、これからぜひご案内しますよ」ということになる。
業者のベースでいきなり案内されてしまって右も左もよくわからないうちに、その場で意思表示を求められることになるわけだ。
この場合、業者はおもむろにカバンから一枚の書類を取り出して、ネチネチと迫ってくる。
「とりあえず物件を押さえる意味で、この買付証明にサインだけもらえませんか」この種の不愉快な思いをさせられた覚えのある人は多いはずだ。
もちろん案内までされてしまえば、業者は契約への貢献度など無視して、自分たちの商慣習からしつこくその物件に関する報酬請求権を主張してくることは目に見えている。
それに対してTさんの手法によって集められた情報は、このような不快な思いをすることなく、物件そのものについて、自分なりに確認できるというのである。
郵送で送られてきたチラシには新聞折り込みチラシとちがって、たとえば中古マンションであれば、その価格はもちろんのこと、物件の所在を示す地図や間取り図、それに管理費や修繕積立金といった基礎的なデータが書き込まれている。
したがって、業者からはなに一つ説明を受けなくても、物件の基礎的な情報について総合的に考察しながら、じっくり検討することができるのだ。
そこには地図もあるわけだから、現地に出かけていけば部屋の中はのぞけないまでも、周囲の環境や駅や学校、それに日日の買い物に使えるスーパーまでの道筋などについて、マイペースで十分検討できるのである。
そうして、この物件だけはぜひ部屋の中も見てみたい、できれば価格交渉もお願いしたいという物件にかぎって、業者に連絡すればよい。
ここで初めて同じ情報を送ってきている業者の中から、正式に仲介を依頼する業者を一人、選ぶことになる。
業者の選択については、先に述べたようなチラシの帯部分のズレに着目するのも一つの方法であるが、さらに重要なのはどのチラシにも右下に印刷されている、情報提供者である業者の立場を示す「取引態様」という欄に着目することが重要である。
この部分には、「媒介」「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」「売り主」というように買い主がまさに知りたかった情報が印刷されているからだ。
「専任媒介」もしくは「専属専任媒介」とあれば、それは売り主に直につながった直物チラシということになる。
ところが単に「媒介」または「一般媒介」と書かれたチラシには、直物チラシも先物チラシもそしてアンコチラシも混在しているのである。
正式に仲介を依頼する前に、電話一本かけて直接業者に直物かどうか確認すれば、それだけで後々のトラブルも未然に防げるのだ。
Tさん流の物件情報を収集する手法は、物件の良し悪しをマイペースで徹底的に検討できることに加えて、業者の情報収集力、それに各物件ごとの業者の取引態様といった要素を総合的に検討したうえで、最後に、どの業者に仲介を依頼するかを判断するという画期的な手法なのである。
一、物件情報は郵送もしくはファックスで収拾する。
二、最初の下見は営業マンなしで、自分自身で見にいく。
交渉窓口となる営業マンは、できれば直接売り主につながる元付け業者を選手付金の法的な解釈さえ把握しておけば、解約なんてお手のもの。
分譲業者が、手付けなんでいくらでも結構と契約をあせればあせるほど、ますます気楽に解約できるというわけだ。
「最近は無事、契約まで持ち込んでも、全然安心してられないんですよ」マンション分譲業者の営業マンからよく聞かれるのは、こんなボヤキである。
話を聞いてみると、売買契約を締結して手付金まで受領していたのに、それでも心変わりした買い主に契約を解除されることが珍しくないという。
さらにやっかいなことに、その後の手続きがすんなり事務的には済まないのだそうだ。
契約の解除にともなって、受領済みの、あるいはこれから受領予定だったカネの授受について、売り主、買い主双方の言い分に食いちがいが出て、思わぬトラブルが起きるというのである。
不動産の売買取引では一発決済、つまり買い主から売り主へのカネの受け渡しが全額を一度に払ってそれで終わりというようなことはまずない。
値の張る買い物だから、支払いは普通、数回に分けて行われる。
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